博士課程医科学専攻 概要

医学系研究科の基本理念

 医学系研究科の基本理念「医学・医療の専門分野において,社会の要請に応えうる研究者および高度専門職者を育成し,学術研究を遂行することにより,医学・医療の発展と地域包括医療(地域社会及び各種の医療関係者が連携し,一丸となって実践する医療)の向上に寄与することを目指す。」に基づき,次のような目的・目標と方針によって教育研究を行います。

博士課程の教育目的

 医学・医療の領域において,自立して独創的研究活動を遂行するために必要な高度な研究能力と,その基礎となる豊かな学識と優れた技術を有し,教育・研究・医療の各分野で指導的役割を担う人材を育成します。

各コースとその概要

 医学・医療の専門分野において,社会の要請に応えうる多様な研究者および高度専門職者を育成するために,次の3つのコースが設定されています。その1つを選択し,それぞれの目的と専門性に応じた履修カリキュラム(コースワーク)を学生ごとに設計し,履修していくことになっています。

〔基礎医学コース〕
 医学・生命科学等の領域で自立した研究者・指導者として活躍する人材を育成することを目的とし,そのための幅広い専門的知識と研究に必要な技術や実験デザインなどの研究遂行能力を修得します。

〔臨床医学コース〕
 研究マインドを備えた臨床医学等の高度専門職者を育成することを目的とし,病態学,診断・治療学,手術技法,統計解析など臨床医学や社会医学の高度な専門的知識・技能・態度ならびに主として患者を対象とする臨床研究の遂行能力を修得します。 このコースは,臨床専門分野ごとのサブコースで構成されていますが,さらに〔統合的地域がん治療専門医育成コース*〕を履修することにより,日本臨床腫瘍学会の認定資格「がん薬物療法専門医」の取得を目指すことができます。

〔総合支援医科学コース〕
 総合的ケアなど医療関連の研究・実践能力を備え,包括医療のなかで活躍する高度専門職者を育成することを目的とし,そのための幅広い専門的知識と技術ならびに研究・実践デザインなどの研究・実践遂行能力を修得します。

 *附〔がん医療に携わる専門医師等の研修(インテンシブ)コース〕 〔臨床腫瘍医師養成特別コース〕,〔がん地域診療医師養成特別コース〕は,がん医療に携わる専門医師養成を目的とする大学院生のコースですが,この他に,科目等履修生として専門認定資格を目指す〔がん医療に携わる専門医師等の研修(インテンシブ)コース〕等が開設されています。

学位授与の方針

 各コースの目的に照らして,学生が身につけるべき以下の具体的学習成果の達成を学位授与の方針とします。学位審査は研究科委員会が選出した3人の審査員による学位論文の審査ならびに最終試験によって審議され、研究科委員会の議を経て決定されます。

1.知識と技術
(1)各コースワークに沿った授業科目を履修・修得し,医学・生命科学研究の遂行に必要な基本的知識・技術や臨床医及び医療関連専門職者など高度の専門性を必要とされる業務に必要な 専門知識・技法を身につけ,研究及び専門分野での実践で発揮できる。

2.研究手法や研究遂行能力
(1)各コースの研究法授業及び研究実習や論文研究・作成の実践を通して,自立して研究を行うのに必要な研究計画・実験デザインの立案などの研究手法や研究遂行能力を修得し,創造性豊かな研究・開発を実行することができる。

3.研究者あるいは高度専門職者としての資質・能力
(1)生命科学・医療倫理,情報リテラシーなどの授業科目や研究室等での研究活動を通して,研究者あるいは高度専門職者に求められる高い倫理観とともに医学・医療の諸分野での指導的役割を果たす資質・能力を身につけている。
(2)研究の計画・遂行や論文作成に必要な情報収集ならびに学会・研究会等への参加を通して,日本語と英語を用いたコミュニケーション・スキルを身につけ,英文論文による情報発信など,国内外の研究者あるいは専門職者と専門領域を通した交流ができる。

博士課程の教育目標

 教育成果として,次のことを達成目標とします。

1.高い倫理観と豊かな人間性を育み,医学・医療の諸分野での指導的役割を果たす能力を身につける。
2.幅広い専門的知識・技術を身につけ,研究及び医学・医療の諸分野での実践で発揮できる。
3.自立して研究を行うために必要な実験デザインなどの研究手法や研究遂行能力,あるいは研究能力を備えた高度専門職者としての技量を身につける。
4.幅広い視野を持ち,国内外の研究者あるいは専門職者と専門領域を通した交流ができる。

博士課程の教育方針

 目的・目標の達成に向けて,次の方針のもと教育の実施,カリキュラムの編成をしています。

1.育成する人材像ごとに「基礎医学コース」,「臨床医学コース」,「総合支援医科学コース」に沿って,学生ごとの履修カリキュラムを設計し,それぞれの専門的知識・技術と研究・実践能力ならびに関連分野の教育を行う。
2.各コースにおいて,自立して研究を行うのに必要な実験デザインなどの研究手法や研究遂行能力を身につけるための実践的教育を必修科目として行う。
3.医学・生命科学研究者や医療専門職者として必要な倫理観やコミュニケーション能力などの基礎的な素養ならびに各自の専門性を深めるための授業を共通必修選択科目として行う。
4.国内外の学会・研究会等に積極的に参加させ,幅広い視野と成果を発信する能力を育てる。

教育課程編成・実施の方針

教育方針を具現化するために,以下の方針の下に教育課程を編成し,教育を実施します。

1.教育課程の編成
(1)〔基礎医学コース〕,〔臨床医学コース〕,〔総合支援医科学コース〕の目的に応じたコースワーク(履修カリキュラム)を学生ごとに設計することが可能な教育科目を体系的に配置した4年一貫の教育課程を編成する。
(2)コースの目的に沿って,自立して研究を行うために必要な研究デザインや研究戦略の理論を学ぶ「研究法」と,研究技術や遂行能力を修練する「研究実習」の科目を,4年間を通した[コース必修科目]として配置し,研究手法や研究遂行能力の修得を図る。
(3)研究者あるいは高度専門職者としての資質・能力を養う科目や基本的知識・技術や専門知識・技法を身につける選択必修科目を次の区分で体系的に配置し,各コースの目的及び学生のニーズに沿った科目を各区分から選択することにより,個々の学生ごとにコースワークを設計する。
【共通選択必修科目Ⅰ】
 各コースに共通あるいは関連する基礎的素養を涵養するための授業科目群(生命科学・医療倫理,情報リテラシー,アカデミックスピーキング・アカデミックライティング,プレゼンテーション技法,患者医師関係論,医療教育,医療法制)で構成する。
【共通選択必修科目Ⅱ】
 コースおよび各自の目的に沿った専門的技術を修得するための授業科目群(分子生物学的実験法,画像処理・解析法,組織・細胞培養法,組織・細胞観察法,行動実験法,免疫学的実験法,機器分析法,データ処理・解析法,電気生理学的実験法,動物実験法,アイソトープ実験法)で構成する。
【共通選択必修科目Ⅲ】
 コースおよび各自の目的に沿って専門分野の理解を深め,あるいは幅広い知識を修得するための授業科目群(解剖・組織学特論,生理学特論,生命科学特論,分子生物学特論,微生物感染学特論,免疫学特論,病理学特論,薬理学特論,環境医学特論,予防医学特論,基礎腫瘍学,臨床病態学特論,臨床診断・治療学,臨床局所解剖学,臨床微生物学,法医中毒論,臨床腫瘍学,臨床遺伝学,臨床試験学,映像診断学,老年医学,地域医療特論,健康行動科学,社会生活行動支援,周産期医学,リハビリテーション医学,国際保健・災害医療,医療情報システム論,認知神経心理学,看護援助学特論,緩和ケア科学特論など)で構成する。

2.教育の実施体制
(1)研究指導及び授業科目の教育内容毎に,その専門的分野の教育を行うのに適した専門性を有する教員が,コース区分に囚われずに研究指導および講義・実習等を担当するように,本研究科における研究指導教員及び授業担当教員の適格審査基準に基づき研究指導教員及び研究指導補助教員を配置する。
(2)学生ごとに主指導教員1人,副指導教員1人を置き,必要に応じてさらに1人副指導教員を加えることができることとし,個別の学習及び研究指導を行う。
(3)各授業科目に教科主任を置き,授業内容に応じて複数の担当教員により実施する授業の一貫性を担保し,授業科目を統括する。
(4)各コースにコースチェアパーソンを置き,コース関連授業科目の編成・開講等のコーディネイト,コース所属学生の修業状況の把握や研究論文進捗状況の点検など,当該コースワークを統括する。

3.教育・指導の方法
(1)入学時に指導教員と学生が相談の上,個別の履修計画及び研究指導計画(コースワーク)を策定し,学生のニーズに即した学習及び研究指導を行う。
(2)講義による知識の学習と実験・実習による実証的学習や研究グループ内でのグループダイナミクスによる自己学習と問題解決法の獲得などをバランスよく組み合わせて,少人数の対話・討論型教育及び個別指導に重点を置いた教育を行う。
(3)国内外の学会・研究会等への参加を研究指導計画に盛り込み,に積極的に参加させ,幅広い視野と専門領域における交流能力を育てる。
(4)学生ごとに研究指導計画に基づいた研究実施経過報告書を毎年度提出させ,研究指導及びその成果の進捗状況を研究科運営委員会及びコースチェアパーソン等により,組織的に点検する。
(5)社会人学生に対しては,教育方法の特例を適用した柔軟な授業形態による履修とともに,授業ビデオやeラーニングを活用した学習など,教育指導の工夫を行う。

4.学修成果の評価
(1)授業科目の学修成果を評価するために,授業科目担当教員は,測定する到達目標の特性に応じて,筆記試験,レポート(論文),発表,活動内容等により多面的評価を行う。
(2)個別の授業科目の成績評価方法については,シラバスに明示する。
(3)成績評価は成績評価基準に基づき判定する。

評語
(評価)
評点 評価基準 合否
判定
成績評定
(GP)
90点以上100点満点 学修到達目標を十分に達成し,極めて優秀な成果を上げている。 合格 4
80点以上90点未満 学修到達目標を十分に達成している。 3
70点以上80点未満 学修到達目標をおおむね達成している。 2
60点以上70点未満 学修到達目標を最低限達成している。 1
不可 60点未満 学修到達目標を達成していない。 不合格 0
※上記により評価が難しい授業科目は,合又は不可の評語によって表し,合を合格とし,不可を不合格とする。
(4)「研究法」授業の学修成果については,コースごとに関連教員と全学生が一堂に会した3年次学生の論文研究中間発表審査会を開催し,研究の進捗状況の確認・助言指導とともに,研究遂行能力の修得状況について評価を行う。
(5)学位論文審査は,1)学位論文の審査は,研究科委員会が選出した3人の審査員による学位論文の審査ならびに最終試験によって行い,2)論文審査に当たっては公開の論文発表審査会を開催し,3)最終試験は,学位論文を中心として,これに関連のある科目について口述により行う。
 その審査(評価)基準は,①学位論文は,国際的に評価の定まっている欧文による学術誌に発表または最終受理された論文,あるいはそれと同等の学術的価値を有するものとし,②最終試験の結果は,可または不可で評価し,審査員3人による評定が全て可であることをもって合格とする。
(6)教育課程を通した学修成果を,学位論文及び各授業科目の成績を用いて総合的に評価する。
(7)成績評価の結果は,評価分布等を使用して定期的に点検を行い,必要に応じて教育方法等の改善を行う。

学位

 博士課程医科学専攻で取得できる学位は博士(医学)です。

医学系研究科 研究室概要

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研究グループ紹介

 医学科基礎医学系

 医学科臨床医学系

 地域医療科学教育研究センター

 総合分析実験センター

履修方法

 授業科目は,「必修科目」と「選択必修科目」から成り,次の区分で構成されています。

コース必修科目

各コースの目的に沿って,自立して研究を行うために必要な研究デザイン(課題の抽出・設定,仮説・立証計略の立案,方策・方法の考案,手順・計画設計など)の理論を学ぶ「研究法」と実践的に修練する「研究実習」の二つの科目から成る必修科目です。

共通選択必修科目Ⅰ

各コースに共通あるいは関連する基礎的素養を涵養するための科目群で,2科目以上を選択履修します。

共通選択必修科目Ⅱ

コース及び各自の目的に沿った専門的技術を修得するための科目群で,2科目以上を選択履修します。

共通選択必修科目Ⅲ

コース及び各自の目的に沿って専門分野の理解を深め,あるいは幅広い知識を修得するための科目群で,2科目以上を選択履修します。

詳細については

各授業科目の授業開設表及び学習要項(シラバス)等については,在学生向け情報を参照してください。

修了の要件

 博士課程を修了するためには,大学院に4年以上在学し,上記の授業科目につき30単位以上を修得し,かつ,必要な研究指導を受けた上,博士論文の審査及び最終試験に合格することが必要です。ただし,在学期間に関しては,優れた研究業績を上げた者については,3年以上在学すれば足りるものとしています。

教育方法の特例

 大学院設置基準第14条では,「教育上特別の必要があると認められる場合には,夜間その他特定の時間又は時期において授業又は研究指導を行う等の適当な方法により教育を行うことができる。」旨規定されており,社会人等の修学についての配慮が明記されています。

 本研究科博士課程医科学専攻では,本大学院での修学を希望する社会人等に対して,同条に定める「教育方法の特例」による教育を実施しています。「教育方法の特例」を希望する者は,指導教員と相談のうえ,授業及び研究指導を夜間や特定の時間又は時期に受けることができます。